商標出願時の留意点③ ~指定商品・役務の区分変更~

弁理士の岩佐です。
今回は、指定商品・役務の区分変更についてご紹介したいと思います。

最近、クライアント様からある商標について、「菓子」を指定商品として商標出願を行いたいとのご依頼がありました。これまでは、「菓子」を指定商品に指定するには、願書の【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】の欄で「第30類」「菓子」を記載すれば何の問題もありませんでした。しかしながら、今年(1月1日)からは、「第30類」の菓子の一部が「第29類」に移行され、「菓子」が2区分に分かれることになりました。

 第29類:菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)
 第30類:菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)

特許庁の説明によれば、果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とし、それらの根本的な性質を変えない程度の煎る、煮る、焼く、揚げる等の加工及び調味をしてなる商品は第29類に分類されるとされています。具体例としては、「甘栗、甘納豆、いり栗、いり豆、焼きりんご、ゆで小豆」等が挙げられています。また、じゃがいも等の野菜等をチップ状等の形に成型したうえで加工及び調味をしてなる商品についても、その根本的な性質が変わるものではないため第29類に分類される、とされています。従って、スナック菓子の「ポテトチップス」も第29類に分類されることになります。

一方、第29類に該当しない菓子は第30類のままとなります。具体的には、小麦粉やうるち米、もち米を主原料とする「せんべい」や、穀物としてのトウモロコシを主原料とするスナック菓子である「ポップコーン」など、穀粉及び穀物からなる加工品に該当するものは第30類に分類されます。先ほど、同じスナック菓子である「ポテトチップス」は第29類に分類されると書きましたが、原材料が野菜(じゃがいも)か穀物(とうもろこし)であるかの違いにより、同じスナック菓子でも区分が異なることになっています。

また、「パイ」、「ドーナツ」、「クッキー」、「あめ」、「チョコレート」、「アイスクリーム」などの商品も第30類のままです。ここで注意が必要なのが、上記のような「ペストリー(パイ、タルト、キッシュなど)及びコンフェクショナリー(砂糖菓子など)」、「チョコレート」、「アイスクリーム、シャーベット及びその他の氷菓」に該当する商品については、その商品を構成する原材料の中で果物やナッツが最も大きな割合を占めている場合であっても、これまで通り第30類に分類されるという点です。具体例を示しますと、「チョコレートで覆われたナッツ菓子」は、原材料の重量の割合としてはナッツが多くを占めていますが、チョコレートでコーティングされていることによって、もはや「コンフェクショナリー」の性質に該当する商品と変わっていることから、第30類に分類されるとされています。すなわち、商品の「主原料」が指すものは、必ずしも、その商品を構成する原材料の重量の割合が最も大きいものとは限らないということになります。

また、主たる原材料の加工の度合いが極めて高い等により、その根本的な性質が変わっている商品については、もはや第29類に含まれる商品の性質には該当しなくなっているため第30類に分類されます。例としては、「ようかん」は原材料の餡にはゆでた小豆等の豆類が主原料として用いられていますが、もとの小豆からはその加工の度合いが極めて高いことから、もはや「コンフェクショナリー」の性質に該当する商品へと変わっているため第30類に分類されるとされています。

以上のように、「菓子」の区分については非常にややこしい話になってしまいました。
従いまして、菓子を指定商品に指定する際には、その商品がどのようなものなのかを正確に把握する必要があります。また、「菓子」全般を保護したい場合には、第29類、第30類のどちらも指定しておく必要があります(その分、費用はかかってしまうのですが)。

なお、今回の区分変更は、指定商品・役務を指定する際の基本となる国際分類が改訂されたことによるものですが、毎年のように改訂があるため注意が必要です。

詳しくは、以下をご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/ruiji_kijun/ruiji_kijun11-2020.html
https://www.jpo.go.jp/news/public/iken/document/190919_ruiji_kekka/01.pdf